はじめに
本記事は、FM音源自作キットの雄 『SPFM Light MUCOM PACK』の続編である。前回取り上げた事柄以外を中心にレビューしていく。「SPFM Light」や、「RE:birth用音源モジュール(以下、音源モジュール)」の基本的な情報は元記事を参照いただきたい。
なお、先にカスタム活用術②を書きあげてしまったため、ちぐはぐな状態ではあるが、やるならこの①から先にしたほうが良い事を申し上げておく。なにせカスタム活用術②は通称「魔改造」と呼ばれるものに等しい内容であるからだ。それに比べてこの活用術①はキット完成時から特にはんだごてを握る必要がないものばかりで手軽にできる。
SPFM Light カスタム活用術
①音源モジュール2枚差し
やり方は単純で「SPFM Light」に「RE:birth音源モジュール」を2枚差すだけだ。内側がスロット1、外側がスロット2になる。あとはSCCIConfigにて各スロットの音源タイプおよびクロック周波数を指定する。
音源モジュール2枚差しの利点は大きく2つある。
1.数種類の曲データを快適に聴く
ひとつめの利点は、各スロットに別々の音源モジュールを搭載することで対応しているプレイヤーなどのソフトウェアを使い分ける際、音源モジュールの入替えが不要となる点だ。
ソフトウェアによるエミュレータと違い、 実チップ演奏では専用のハードがないと正確な演奏が実現しないために、聴きたい曲データに合わせて都度、音源モジュールを交換する手間が発生する。(一部の音源は互換性がある他の音源の代わりとして使用する事もできる)
SPFMplayerを例にとって説明しよう。
このソフトでは曲データのプレイリストを作るか、直接ファイルをドラッグアンドドロップして再生できる機能がある。そして選ぶデータの種類はSPFM Lightが再生に対応しているものならなんでもプレイリストに入れることが出来るのだが、その時に対応する音源モジュールがバラバラであったとしても設定した音源モジュールで再生されるようになっている。
対応している音源がスロットに差さってさえいれば、SPFMplayerは正しく曲データの演奏を開始する。複数の音源モジュールを持っているならそれだけ多くの種類のデータ演奏が楽しめるのがSPFM Lightの良い点だ。
2.一台の”マルチティンバー音源”として楽しむ
ふたつめは、OPM+OPNAはもちろん、OPM+OPM、OPNA+OPNAのような、現実のハードではありそうでなかった(※1)組み合わせによるマルチティンバー音源として活用できる点だ。SPFM Lightと音源モジュールを同一のパソコンに接続する。複数台にも対応しているのでどんどん拡張ができる。
※1…あったかもしれません
これは通常より豪華な音色・音数を用いた曲データ作成をしたい人にはとても嬉しい機能だ。先に書いた音源モジュール以外の組み合わせでもなんでも自由だ。
筆者の技量不足でサンプルはDCSG単体でテスト曲になったがご覧いただきたい。
自由に音源やパート数を考えず同時演奏できるというのは、本来の箱庭的な技術であるFM音源などが得意とする「チップチューン」の範疇からは外れるかもしれない。が、一方でハードの限界を突破して徐々に豪華になっていったVGMの歴史からいえば、もしかすると過去にあった分岐点の先の一つだったのではないだろうか。このやり方もなかなかに趣深いものがある。
②オペアンプの交換
続いてのカスタムはオペアンプの交換だ。SPFM Light本体には2つ、OPNAモジュールは4つのオペアンプがある。
ちなみに、SPFM Light本体とOPNA・OPM音源モジュールのそれぞれに、四谷言ノ助氏(@g_yotuya)の「よちゅ~ん☆レシピ」というカスタム方法が確立されているので、まずはそちらを試すのが手っ取り早くて確実だ。そうしたうえで更なる音質の変化を試したい場合にオペアンプの交換をするとよいだろう。
よちゅ~ん☆レシピについては SPFM Light 公式サイト内の http://www.pyonpyon.jp/~gasshi/fm/spfmlight.html こちらを参照のこと。
③抵抗・コンデンサの交換
少し手間と技術を要するが、 音質や品質の向上の為に 抵抗やコンデンサの交換をやってみても良いだろう。すべてを一度自分ではんだ付けした事があればどれがどの部品と影響しているかもわかりやすい。ピンポイントで改造が出来るのがとても電子工作キットのようで楽しく取り組める。ただし悪くなることもあるだろうし、部品が取り替えにくい場所な時もあるだろう。深追いは禁物、気を付けて交換するとよいだろう。
④SPW for SPFM Lightの追加
SPW for SPFM Lightというのは、SPFM Lightを使った曲データの再生で、PCMパートの再生を司る部分を外部機器に託した同人ハードで、SPFM Lightの作者でもある、がし3 氏(@gasshi72) の作品だ。
SCCIで動作するソフトに対応していて、通常パソコンで行っていたPCM再生をSPWが肩代わりしてくれる。(OPNAのADPCMパートやOPN2のFM ch6のPCM再生などを除く)
肩代わりとは書いたが実際の効果は絶大だ。遅延時間は驚異の3ms、とSPFM Lightとのタイミングがピタっと合う。PCのサウンド機能とSPFM Lightとでは再生時のタイミングが違うため、遅延時間の微調整に頭を悩まされるのだが、SPWだとSPFM Lightとほぼ同じになるためその面倒がなくなるのだ。
※2019/11/19追記・写真差替え
センタープラスの5V1AのACアダプタを使うとノイズ対策になるのも嬉しい。ただしその際は基板上にある自ジャンパピンは外しておこう(外さないとUSBとACアダプタの両方で電源をとってしまう事になると、がし3さんからご指摘あり)
SPWの接続はマイクロUSBケーブルでPCへ接続し、音声はSPFM LightにあるLINE IN端子があるのでSPWの出力端子と音声ケーブルで接続するだけだ。
なお、2019/11/18現在、SPWの在庫は 家電のケンちゃん(@kadenken)の販売ページ を見る限りまだある!ので手に入れていない方は必ず買おう!私は2個買った!
※2019/11/19追記 早速通販分は売り切れてしまっていた(購入を考えていた方には申し訳ない)
おわりに
簡単にできるSPFM Lightの活用術を紹介してみた。はんだごてを極力使わずにライトな改造や機器の追加を施す事をメインにしたが、これでも結構な効果が期待できるものである。まずはこのようなやり方でSPFM Lightの世界を楽しんでもらえたらと思う。
最後に、余談になるがMMLによる作曲は苦手だったので今までやってこなかったのだが、今回真剣に取り組んで面白いと感じたので、今後は少しずつ作曲もやっていきたいと思った次第であった。
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